足立区の未来
向けたアクション

小さな一歩の積み重ねで、
足立区の未来がつくられています。

2025.11.18
レポート

一人ひとりに寄り添う就労支援で障がいがある方のやりがいを支え地域との絆を深める

(左)鵜沢さん (右)涌井さん

母体となる社会福祉法人「トポスの会」は、ギリシャ語で“居場所”を意味する「トポス」から

3Fの広々とした作業スペースとベランダ

日暮里・舎人ライナーの高野駅から徒歩12分。足立区興野の静かな住宅地に現れる「ウィズユー」は、一般企業で働くことが難しい知的障がい・精神的障がいのある方をサポートする就労支援施設です。施設長の鵜沢さんと支援員の涌井さんに、設立から15年の歩みと今後の展望を伺いました。

PROFILE

ウィズユー

ウィズユーでは、足立区に住む知的・精神的な障がいのある方々が自分らしく働き、豊かな社会生活を送るためのさまざまな支援を行っています。平成22年の開設以来、生活能力の向上を目指す「自立訓練(生活訓練)」、就労に必要なスキルを身に付ける「就労移行支援」、働く機会を提供する「就労継続支援(B型)」の3つの事業を展開しています。

ウィズユー
https://withyou.website/

鵜沢勝さん
就労支援施設ウィズユー 施設長
涌井太輔さん
就労支援施設ウィズユー 支援員

ウィズユー

障がいの垣根を越えて、人としての尊厳と働く喜びを

就労支援を行う4階建ての建物のうち、1階はパン屋になっています。入口の真っ赤な扉を開けると、食パンやクロワッサン、マドレーヌなどがズラリ。就労支援を受ける利用者たちが職人の指導を受け、丁寧に焼き上げたパンや洋菓子を販売しています。3・4階はシール貼りや包装、医療用検査キットの組み立てといった軽作業を行うための明るく開放的な作業室。利用者はそれぞれの特性にあった作業に日々従事し、通所率はほぼ100%を誇ります。

ウィズユーの設立当初、鵜沢さんはこうした軽作業を福祉施設に依頼するメーカー側の担当者でした。縁あってウィズユーで働き始め、業務に懸命に取り組む人々がわずかな工賃(※1)しか得られない現状を目の当たりにし、「障がいがある人々の働きが正当に評価されていない」と感じたそう。そこで、メーカー勤務時の人脈を活かして中間業者を介さずに企業と直接取引する仕組みを整備し、工賃を10年間で約8倍にまで引き上げました。「お金を稼ぐことは、利用者のやりがいや自信を生みます」と力説する鵜沢さん。今後も工賃のベースアップに積極的に取り組んでいきます。

一方、2年前に支援員としてウィズユーに加わった涌井さんは、施設で作ったパンや焼き菓子を足立区内のイベントで販売する地域交流活動に力を入れています。始めはSNSを通じてマルシェ主催者や地元の団体に声をかけていましたが、今では主催者側から参加のお誘いをもらうことも増えたそう。福祉業界に留まらないつながりが増えることで、利用者の活躍の場も広がりました。最近では「あだちSDGsパートナーMeeting」にも参加しているそうで、今後の地域協働にも期待が高まります。「施設の外で地域の人と関わることで、自然と一般の方々の障がいへの理解も進みます」と語る涌井さん。こうした活動を通して、誰もが安心して関わり合える温かい環境が育まれています。

鵜沢さんと涌井さんが共に願うのは、障がいのある一人ひとりが自分らしく、豊かな人生を送ることです。誇りを持って働き、社会と接しながら、人間らしい充実感を感じて欲しい――その思いを胸に、利用者の「こうなりたい」という目標に寄り添い、就労からその先まで伴走しながら支援を続けています。お二人の熱意は、障がいの有無にかかわらず、誰もが共に生きる喜びを感じられる社会の実現へとつながっていきます。

(※1)工賃…障がいのある人が働く場において、雇用契約を結ばない生産活動に対する報酬。

関連するSDGsゴール

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目標10
目標11
目標17

Words for the Next!

未来の足立を見据える「ウィズユー」鵜沢さん・涌井さんの語録

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ライター

障がいのある方々の生活や就労を支援するにあたり、これから力を入れていきたいことはありますか?

鵜沢さん

当施設では、「その人の一生をどう支えていけるか」という視点を大切にしています。現在最年長の利用者は50代ですが、高齢になると保護者の方々のサポートが難しくなり当施設でも支援しきれない部分が出てきます。そういった時のために他機関との連携に力を入れていきたいですね。

涌井さん

障がい者支援だけでなく、障がい児分野や高齢者分野とも連携していけるといいですね。最近では、特別養護老人ホームの清掃作業を始めたので、こういった機会に、互いに相談し合える関係性をつくっていけたらと考えています。

ライター

他機関や他業種との協働が、これからもっと広がると良いですね。

涌井さん

足立区の皆さんはフットワークが軽く、エネルギッシュな人たちばかりです。この活気を結びつけて、さまざまなコラボイベントが増えたら嬉しいです。

鵜沢さん

「あだちSDGsパートナーMeeting」が開催されている「あやセンター ぐるぐる」の活動も、はじめは行政からの発信でしたが、今では足立区全体で盛り上がっていますよね。さらに他のエリアをぐるぐると巻き込み、やがては世界まで届いてほしい。ウィズユーもその輪に加わり貢献できれば、これほど幸せな「ぐるぐる」はありません。